ルスタンの時代 : BALMAIN コレクション主要ランウェイ : 2011-2021年

シーズン2、エピソード2 :

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2012年秋 : FABERGE(ファベルジェ) コレクション

「10年の時を経て、このコレクションを振り返ると…正直、少なからず感慨深いものがあります。

このコレクションは、初めてのニューヨークへの旅で、偶然にも貴重で美しい作品に出会ったことがきっかけで始まりました。初めて"ビッグ アップル"を知った、個人的に特別な旅でした。旅の間、毎日、小さな子供のような気持ちで、喜びいっぱいに新しい世界、新しい美を発見したことを今でも覚えています。

滞在中に、クリスティーズで開催されたエリザベス・テイラーのジュエリーのオークションに行きました。その時、あの素晴らしいファベルジェの卵を見つけたのです。実は、リチャード・バートンがかつてエリザベス・テイラーに贈った品なのです。その卵を見たとき、その場で、この卵を中心にしたコレクションを作ろうと思いました。その美しさに魅了されたのです。パールで飾られていました。なめらかなゴールド。信じられないほど豪華なプレシャスストーン。そして…なぜか…洗練されたミニマリズムと並外れたマキシマリズムが見事に共存していたのです。

 

 

ニューヨークでの素晴らしい体験を経てパリに戻ってから、すぐにチームとこのコレクションのスケッチに取りかかりました。ランウェイに登場するすべての作品には、シャープなカットと徹底してモダンなスタイルが与えられました。そのランウェイに、伝統的なもの、バロック様式、豪華なものを持ち込むというアイデアが気に入りました。Balmain アトリエは、その職人たちだけが成し得るように、パールや素晴らしい刺繍、複雑な織物、細かいクロスステッチなどを完璧に仕上げました。また同時に、メゾンの特徴であるテーラリングをランウェイで際立たせることに成功したのです。10年後、このコレクションの重要なルックは、回顧展のランウェイショーに登場する、極めて力強い復刻版のひとつになりました。昨年9月のBalmain フェスティバルでカーラ・ブルーニが着用しています。そしてつい数週間前、今年のグラミー賞のリル・ナズ・Xのレッドカーペット登壇のために、同じルックを基にしたユニークなデザインを制作しています。」

オリヴィエ・ルスタン

回顧展のルック、10年後

先日、オリヴィエ・ルスタンのBalmain クリエイティブディレクター就任10周年を祝う回顧展の一環として、Faberge(ファベルジュ)コレクションの重要なルックが披露されました。昨年9月のBalmain フェスティバルのランウェイでは、新しいアイコンとなる、2012年のFaberge(ファベルジェ)復刻版をカーラ・ブルーニが着用していました。

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リル・ナズ・X スペシャルエディション

「このグラミー賞のレッドカーペットのために、改めて、Balmain 2012年秋コレクションを振り返り、先日、Balmain フェスティバルでの回顧展で取り上げたものと同じ2012年のルックを採用し、授賞式への完璧な入場を演出しました。モンテロのホワイトジャケット、パンツ、シューズは、まさにバロック様式の華やかさを表現していました。ルックを完成させる最高の仕上げとして、アトリエの職人たちが新たな蝶のイメージを刺繍しました。モンテロのアルバムの重要なシンボルと中心的なメッセージを反映しています。

オリヴィエ・ルスタン

2016年春 : LES AVENTURIERS(レザヴァンテュリエ)

「Balmainで初めてのメンズウェアのランウェイをチームとともにデザインし、これから待ち受けている多くの新しい可能性と挑戦に、この上ない興奮を覚えました。ですから、このコレクションが20世紀初頭の偉大な探検家や冒険家たちからインスピレーションを得ているのは至極当然に見えました。

“aventuriers”(アヴァンテュリエ/冒険者たち)のモダンな考え方、独創的なスタイル、スリリングな活躍にいつも魅力を感じてきました。こうした科学者や貴族は、それまでの帝国主義者たちとはまったく違っていたからです。栄光や征服、領土の代わりに、新しい理解や経験を追い求めていた人たちです。そして何より、まだ見ぬ未知の世界が広がっていることに興奮を覚えていたのです。

その壮大な旅の中で、異なる文化のスタイルを融合させ、真の意味で適応力のあるワードローブを作り上げました。そこで、かつて彼らがそうしたように、この2016年コレクションでは、多くの影響に目を向けました。手触りのよいスエード、コットン、レザーは、砂漠の清らかな中間色の明暗を反映しています。この抽象的で美しい風景が、偉大な探検家たちに素晴らしい魅力を与えているのです。何より、Balmain Army独特のスタイルと展望がありました。そして、真のパリのメゾンだけが生み出すことのできる熟練の職人技によって完璧になったのです。」

オリヴィエ・ルスタン

2018年春 : オペラ座のBALMAIN

ピエール・バルマンのように、オリヴィエ・ルスタンも幼い頃にフランスの首都に移り住むという夢を抱き始めました。そして、ルスタンが2018年春コレクションを華麗なオペラ・ガルニエで発表すると決め、そのまばゆいばかりの内装を再訪したとき、思い出があふれ出しました。まさにその場所で、20年前に家族でパリを旅行した際に、パリに移住してデザイナーとして働くという夢を抱き始めたのです。

その記念に、ルスタンは若い頃の自分、つまり22年前のオリヴィエ・ルスタンに手紙を書くことにしました。

「ガルニエのまばゆいオペラハウスに足を踏み入れたときに感じた畏敬の念は一過性のものではない。もちろん、年月が経てばその衝撃は弱まるけれど、この瞬間から22年経った今、明言できる。ここに戻ってくるたびに、同じ感嘆に心打たれるだろう。そう、今はまだ、地方に住む10歳の子供で、初めて訪れた首都の旅をオペラ座の夜で締めくくっているかもしれない。だが、これは君にとって指針となる記憶になり、君が夢見ている未来のシンボルのひとつになる運命にある。寝室の壁に貼られた音楽のポスターや、雑誌から切り抜いて集めたファッション記事と同じようにね。

そして、今の私から言えることは、君が抱くような夢は実際に叶うことがあるということだ。君はパリに戻り、歴史あるメゾンのデザインを担当することになるんだよ。今、君をすっかり感動させているスーパーモデルたちと一緒に仕事をするんだよ。自分のデザインと、インスピレーションを与えてくれるミュージシャンの作品を融合させることになるんだよ。そして、そう、君はこの並外れた空間に戻ってくる。実のところ何度もね。心の半分では、過去に戻って、君にすべてを伝えられたらいいのにと思っている。でも、残り半分では分かっているんだ。古い決まり文句を繰り返すのはうんざりするかもしれないけど、人生の真の豊かさは旅に出ることで得られるんだよ。」

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BALMAIN 2018年春

 

 

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2019年春 : BALMAIN クチュール、再生

「Balmainで初めてのクチュールショーの準備を始めたとき、メゾンのアーカイブに目を通しました。誰も驚かないでしょうが、ムッシュ バルマンが残してくれた印象的な遺産に、またしても圧倒されました。何十年にもわたって作り上げられてきた、見事なまでに複雑なディテール、つねに完璧なテーラリング、素晴らしく想像力に富んだ彫刻的なフォルム。メゾン創設者の精神を最初のスケッチに取り入れた瞬間から、このコレクションは彼の作品へのオマージュであると同時に、私とピエール・バルマンの対話のようなものだと思うようになりました。

そして、その対話の中で、何度も立ち返るひとつの重要な問いが、“21世紀のクチュールとは何か”。

 

 

 

まず、クチュールは、日々続く、刺激的な広告やトレンド、毎年、複数のプレタポルテ コレクションをデザインする商業的プレッシャーから解放してくれる、とてもありがたい存在になります。クチュール コレクションに取り組むことは、デザイナーにとって、しばらくの間一歩引いて考えるという非常に贅沢な時間であり、心を澄まし、夢を描き、自由な創造性を発揮するための貴重な機会なのです。外側のファッション界では、スポーツウェア、ストリートウェア、セールなどに取りつかれていたかもしれませんが、一瞬、クチュールに逃避することで、ほんのつかの間そのトレンドに逆らって泳ぎ、夢と美と願望だけを考えることができます。

そう、クチュールはこれまで通り、特別な、手の届かないラグジュアリーであり続けるのです。例えば、本コレクションでは、複雑な刺繍と装飾にスワロフスキー クリスタルパール、ストーン、ビーズを100万個以上使用しています。また、世界の一流熟練職人たちと提携し、唯一無二のアクセサリーを製作しました。しかし、自分自身、チーム、メゾンのアトリエが限界に挑戦し、こうした意欲的なデザインが誕生したのです。Balmainはこうした実験、教訓、革新から学ぶことができると分かっていました。それがクチュールの大きな強みと素晴らしい遺産であり、パリの傑出したメゾンの多くが伝統的に厳格なクチュールを拠りどころに、すべてのコレクションのデザインを進化させてきた理由です。

最後に、メゾンのショーで明確になったと思いますが、クチュールはまさしく現代的に成り得るのです。アトリエの強みであるクラフツマンシップ、テーラリング、職人技を駆使しながら、自分の世代のマインドを作品に取り入れることに努めました。グラフィティから着想を得たパターン、モダンなテーラリング、デニムと高級生地や装飾品とのミックスなどが話題となりました。その他の現代的な試みとして、当時は珍しかったコレクションのライブストリーミングを行い、高級なクチュールの世界に小さな民主化をもたらしました。」

オリヴィエ・ルスタン

2019年春 : パリのエジプト

「ええ、限界を押し広げ、新機軸を求め、耳を傾けてくれる人に、自分の感じたことをありのままに伝えることを楽しんでいます。しかし、同時に、規則を曲げたり壊したりする前に、規則を使いこなせるようになっていることが重要だと常々考えてきました。

本コレクションでは、チームとともに、ファッションウィークの終着点であるパリが、なぜ他の都市と一線を画しているのかに焦点を当てました。パリのファッションが驚くほど刺激的なのは、ランウェイのスタイリングや音楽、セレブリティのおかげではありません。私たちは、比類なきクチュールの遺産と、高水準のテーラリング、複雑な彫刻的表現、装飾によって傑出していると考えています。もちろん、こうした独自の要因はメゾンのDNAの重要な要素であり、匠の技とパリのアトリエの融合が可能にするものをコレクションごとに明らかにしています。

まさしく、熟練の技と伝統があるからこそ、解体し、物事を揺さぶり、規則を少し曲げるという驚くべき自由を手に入れることができるのです。メゾンが長年習得してきた規格、技術、技能を引き続き大切に守りながら、2019年春コレクションでは、チームとともに、カットとテーラリングを自在に組み合わせて、自分の世代が今欲しいと思うワードローブを反映した新しいシルエットとスタイルを作り出しました。

パリのファッションの特別な原点に敬意を表するとともに、現代のパリの原点、ひいては現代文明そのものの起源についても繰り返し言及しました。心を魅了する、感動的なオベリスク、ピラミッド、円柱はナポレオンの遠征に遡り、パリを最も象徴する公共スペースを飾っています。そして、本コレクションに展開するエジプトの世界を反映しています。古代のパピルスや麻の感触がデニムやツイードの作品に現われ、プリントや加工によって時代を経た漆喰や鋭い象形文字が持つ独特の趣きを表現しています。そして、I・M・ペイのように、ガラスやメタルなどの現代的な素材を使って、エジプト人の印象的な幾何学模様に新たなスタイルをもたらしました」。

オリヴィエ・ルスタン

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2020年秋 : コードの破壊

「“né sous x”(Xとして生まれた)子供、出自を知らないフランスの孤児である私は、遺産、人種、所属、溶け込むことに関する問題に取りつかれて育ちました。決して楽な子供時代ではなかったのです。おそらくフランスで最もブルジョワな街、ボルドーで育ち、幼い頃から特定の階級、クラブ、グループには、私のような容姿の人間には立ち入れないことを学んでいました。そして、どうすればその壁を乗り越え、扉を開き、受け入れてもらえるかを夢見て、画策して、数え切れないほどの時間を過ごしました。
必然的に、その答えを求めて最近費やした時間と労力は、ドキュメンタリー映画『Wonder Boy』に反映されていますが、私のデザインに影響を与えました。Balmain 2020年秋のランウェイにはっきりと見られます。

クラシックな乗馬スタイル、ハーレクインパターン、シルクスカーフモチーフなど、かつて手の届かなかった世界のコードの多くが、本コレクションの重要な部分を構成しています。コニャックや深みのあるブルーの贅沢な色彩の取り合わせや、シルクやカシミアなどの豪華な生地は、世襲財産、特権、富といった非常に地位の高い世界を連想させます。

しかし、逆説的に、本コレクションでは、上流階級の排他的な象徴を取り上げ、独創的な解釈によって、より広く、開かれた世界に焦点を当て、開かれた扉と開かれた精神の世界を表現しています。チームとともに、かつて前世代の窮屈なクラスコードであったものを楽しみながら破壊しました。それらを再考し、ひねりを加え、現代的にアップデートして、フレッシュで極めて今風なものを提案しています。次々に登場する多くのスタイルとデザインは、すべての人々に開かれ、現在のBalmainの価値観であるインクルージョンと真に現代的なフランスの素晴らしい多様性を反映しています。
『Wonder Boy』をご覧になった方は、私が自分の出身をたどったことについてご存じでしょう。私がエチオピアとソマリアのハーフで、かつ生粋のフランス人であるという事実を自覚できたこと、自分自身の過去に対する答えを模索できたことは、今この現在を享受できる幸せの実感につながりました。未知の可能性に満ち、境界による限定よりもインクルーシブな動きが見られるパリに暮らせる幸せを感じています。今回のコレクションショーでは、このような私自身の感情を称揚しています。より良いオープンな世界が実現してほしいという願いを込めています。」

2021年春 : LE JARDIN DES PLANTES(パリ植物園)

「ランウェイの準備は決して簡単な仕事ではありません。そして、ご想像の通り、2020年は懸念事項、制限、要件が増え、プランニングを容易にすることは不可能でした!そこで、この課題に最善を尽くすために、つねに目標を明確にすることを心がけました。2021年春のランウェイについての議論を開始した当初から、何週間にもわたるロックダウンの間、数えきれないほどのビデオ会議を重ね、次の2点の本質的な事実に意識を集中させてきました。
1: ファッションはライブショーで体験することがベストであると考える。
2: メゾンのファッションコミュニティにとって体験の共有が重要であると理解している。
もちろん、パンデミックの新たな現実と多くの感染予防上の制約のために、これらの原則を守ることは少なからず困難でした。しかし、フランス語にも英語にも、古くから、“la nécessité est la mère de l'invention”(必要は発明の母)という言葉があります。私たちのランウェイのプランニングはまさに、このような使い尽くされた決まり文句が、実際に真理をついていることを証明してみせました。
夜のショーを特別な複数のパートで構成し、メゾンに欠かせない、遺産、コミュニティ、楽観主義の3つの重要なテーマに集中しました。

オリヴィエ・ルスタン

遺産

通常、デザイナーがキャットウォークに登場し、来場者に最後のあいさつをしてショーが終了します。しかし今回は、広いステージの中央に置かれた椅子にオリヴィエ・ルスタンが座るとショーが始まりました。彼の周りにゆっくりと進んできた、アマリア(Amalia)、アクセル(Axelle)、バーバラ(Barbara)、シャルルー(Charlotte)、ソニア(Sonia)、ヴィオレタ(Violeta)の6人のモデルたち。パリのファッション通は彼女たちの過去数十年の栄光の日々をしっかりと記憶に留めています。それぞれ、アーカイブ作品を現代風に再解釈し、最近再登場したメゾンの迷宮モチーフが描き出すグラフィックが広がるルックに身を包んでいました。ルスタンは、優れたファッション史家オリヴィエ・サイヤール(Olivier Saillard)とパートナーを組み、ピエール・バルマン初期のサロンのファッションショー独特の雰囲気を再現しました。ルスタンとサイヤールが決定したこのノスタルジックな雰囲気に、英語とフランス語で語られるピエール・バルマンの名言を録音した音声が加わり、この夜の中心テーマのひとつである遺産を強調しています。

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コミュニティ

「この数年、私たちは皆、自分自身について多くを学びました。離ればなれにならざるを得ない状況で、一緒にいることがいかに大切かを知りました。そして、特にファッションの世界では、絶え間ない対話、アイデアの交換、経験の共有によって、デザインが最も効果的に機能することを再認識しました。そして、COVIDの間、これらを実現するための新しい方法を見つけることを余儀なくされました。もちろん、大変残念だったのは、多くの友人、パートナー、同僚が、本コレクションを発表した際に、パリに来られなかったことです。そこで、ロックダウン期間中に頻繁に行っていたように、テクノロジーを駆使してできる限り最善を尽くすよう努力したのです。パートナーであるLGが提供してくれた数十枚の巨大スクリーンを、最前列から3列まで敷きつめました。そのおかげで、遠く離れていた人たちをパリのファッションウィークに連れてくることができたのです(まあ、少なくとも1回のショーには!)。」

オリヴィエ・ルスタン

コレクション

「ランウェイと同様、イブニングルックのデザインの多くは新しい現実を明確に映し出していました。何カ月も自宅で仕事をし、キッチンテーブルで電話会議をしていたのですから、テーラードのDBジャケットにバイカーズショートパンツを組み合わせたシルエットを見ても、それほど驚かれませんでした。さらに、コレクションにはニットウェアをふんだんに使い、デイリーユースにも快適なルックを多数提案しました。しかし、何よりBalmainらしいのは、イブニングルックに難なくシフトできるデザインがあふれていたことです。アトリエが誇る熟練のテーラリングはすぐに分かります。力強いパゴダショルダー、細身のジャケット、ロングのフィットしたフレアが特徴的です。全体的に、世代を超え、文化を超えた精神が、メンズとウイメンズをミックスした力強いシルエット、ビビッドな蛍光色、独特な加工を施したサステナブルデニムに反映し、70年代のサンジェルマンと90年代のブルックリンの両方を彷彿とさせます。

 

 

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200万個近いスワロフスキー クリスタル(その多くはアップサイクルされています)を刺繍して、絢爛たる作品でその夜のランウェイを輝かせた職人たちの見事な仕事に、畏敬の念を覚えました。特に、様々な解釈で表現されたメゾンの迷宮モチーフの多くにクリスタルを使いました。遺産に光を当てたショーにふさわしいものでした。ピエール・バルマンが最も印象的な作品の一部に、スワロフスキー クリスタルを巧みに使っていることをチームも私もよく知っていましたから」。

オリヴィエ・ルスタン

楽観主義

「この夜、私たちが最後に発したメッセージは、より良い未来への揺るぎない自信に満ちたものでした。何度も繰り返していますが、メゾンのDNAには楽観主義と大胆さが組み込まれています。75年前、ピエール・バルマンが大胆な賭けに出たことは決して忘れられません。戦争、占領、苦難の年月を経て、フランス解放直後の物資不足、停電、不安に悩む不安定な時期に、自身のメゾンを設立することを心に決めていました。若く、大胆で、これからもっと良い時代が来ると確信していのです。そして、そのエネルギー、大胆さ、楽観主義によって、パリがファッションの中心地としての地位を回復するための力のひとつにメゾンは数えられています。
私の楽観的な性格は、自分の経歴を反映しているのかもしれません。
ほんの少し前まで、私のような者が、現在の地位につくはずはないと思っていました。変化は起きます。前進するには覚悟が必要かもしれませんが、必ず前進できます」。

オリヴィエ・ルスタン

2021年秋 : AIR BALMAIN

75年前、メゾン初のクチュールコレクションで大成功を収めた後、ピエール・バルマンは何をしたか。
荷物をまとめて旅を始めたのです。
アメリカへと飛び立ちました。コレクションについての話ではなく、その代わりに、友人のガートルード・スタインの指示に従って、移動大使としてアメリカ中を飛び回り、フランス文化やサヴォアフェールについての講演活動をするためだったのです。チャンネル諸島も飛び越え、フレッシュな新しいフェミニン デザインのクチュールをロンドンに持ち込みます。戦争でパリのファッションの輸入が途絶えてから6年後のことでした。そして、8日間かけて数々の飛行機を乗り換え地球を半周し、オーストラリアに到着。メゾンの「ニュー フレンチスタイル」を地球の正反対側の国に紹介しました。もちろん、シドニー郊外の町、バルメイン(Balmain)も訪れました。
2020年を過ぎた現在、ピエール・バルマンの旅がいかに刺激的であったかは誰にでも容易に理解できます。戦争と占領の不安な時代を経て、長年拒否されてきた旅の可能性を突然与えられたのです。目的地は何年も夢見たて来た場所。信じられないほど嬉しかったに違いありません。
2021年3月に行ったビデオ ランウェイは、その素晴らしい自由の感覚を表現することを目指しました。偏見にとらわれない広い心を育み、精神を高揚させ、離れていた人々を再会させる、素晴らしい旅の力を強調して、もうすぐやってくるより良い日を皆で待ち望んでいました。」

オリヴィエ・ルスタン

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2021年秋コレクション

「パラシュートドレス、レースアップフライトブーツ、ボンバージャケット、きらめく耐Gジャンプスーツなど、初期のパイロットや宇宙飛行士のユニフォームに見られる独特の美しさをモチーフにしたデザインが多く見られました。特に印象的だったのは、アップサイクルされた約7万個のスワロフスキー クリスタルを使用したデザイン。飛行士から得たインスピレーションに豪華な装飾をミックスし、見事に成功させたアトリエの技術を雄弁に物語ります。

実際の旅と同じように、本コレクションではアクセサリーも重要な位置を占め、メゾンからさまざまな新作が発表されました。数多く登場する、ソフトで丈夫なキャリーバッグには、魅惑的に配置されたカラーと生地が描き出す、最近リニューアルされたBalmainの迷宮モチーフが広がります。また、コンパス、紙飛行機、そしてトラベルネックピローからもインスピレーションを得た、優れたデザインのバッグが多彩に展開します。

そして、ご存知のように、Balmainはパリジャンですから、メゾンのデザインにはすべて、この街の特徴である無頓着さがつねに見られます。しかし、2021年秋のコレクションは空の先駆者たちの大胆な行動力を映し出し、馴染み深いパイオニア精神をより大きく称えられたと思います。」

オリヴィエ・ルスタン

 

 

    • Photo Credits:

      Getty Images
    • BFA
    • Credits :

      Balmain Creative Director: Olivier Rousteing
    • Episode Direction and Production: Seb Lascoux
    • Balmain Historian: Julia Guillon
    • Episode Coordination: Jeremy Mace
    • Webpage Layout and Coordination: Léa Bouyssou
    • Episode researched, written and presented by John Gilligan
    • See acast.com/privacy for privacy and opt-out information.