旅の力
メゾンの礎
75年前、メゾン初のクチュールコレクションで大成功を収めた後に、ピエール・バルマンが最初にしたことは何か。

鞄に荷物を詰めて旅を始めたのです。
アメリカへと飛び立ちますが、その目的はコレクションの話をするためではありません。友人のガートルード・スタインの指示に従って、巡回大使として活動するためです。 アメリカ全土を横断して、フランス文化や伝統技術“サヴォワールフェール”についての講演を行います。チャンネル諸島も飛び越え、フレッシュな 新しいフェミニン デザインのクチュールをロンドンに持ち込みます。戦争でパリのファッションの輸入が途絶えてから6年後のことでした。そして、8日間かけて 数々の飛行機を乗り換え地球を半周し、オーストラリアに到着。彼の「ニュー フレンチスタイル」を地球の正反対側の国に紹介しました。もちろん、 シドニー郊外のBalmain(バルメイン)も訪れています!
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現在のポストコロナ時代に、ピエール・バルマンの旅がいかに刺激的であったかは容易に理解できます。戦争と占領の不安な時代を経て、 長年拒否されてきた旅の可能性を突然与えられたのです。目的地は何年も夢見たて来た場所。 信じられないほど嬉しかったに違いありません。
絶え間ないインスピレーション
ピエール・バルマンは、アジア、アメリカ大陸、アフリカ、オーストラリア、そしてヨーロッパ各地をノンストップで巡ります。この旅はバルマンの多くのコレクションに明確に影響を与え、 伝統的なパリのクチュールに新たな色彩、素材、技術を導入するアイデアをもたらしました。
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メゾンをインスパイアし続ける旅
オリヴィエ・ルスタンの2021年秋コレクションは、ピエール・バルマンがとりわけ愛した、日常を離れる旅を映し出しています。ロックダウンの最中に行われ、旅の魅力をより深く理解する一握りのフォロワーだけに紹介されました。パリ シャルル・ド・ゴール空港にある巨大なエールフランスの格納庫をステージに、黎明期のパイロットや宇宙飛行士の勇敢な精神に敬意を表するコレクションを発表します。また、航空機のエンジニアや技術者とBalmainの職人たちが共有する傑出した技術と卓越へのこだわりを強調しています。コレクションの複雑な刺繍は、流線型の飛行機やエンジンの配線、構造、メカニズムから発想を得ており、こうしたインスピレーションはコレクションショーにおいて重要な役割を果たしていました。

AIR BALMAIN(2021年秋)
メゾンのコレクションと素晴らしいビデオの発表は、自由の素晴らしい感覚を表現することを目的としていました。この瞬間、旅が心を開き、精神を高揚させ、離れていた人たちを再会させる感動的な力を持っていることを誰もが再認識し、ポストコロナの時代に、もうすぐやってくる良い日々に期待したのです。
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BALMAIN トラベルアクセサリー
期待通りに、Air Balmain コレクションではアクセサリーも(実際の旅行中と同じく)重要な位置を占め、メゾンからさまざまな新作が発表されました。数多く登場する、ソフトで丈夫なキャリーバッグには、魅惑的に配置されたカラーと生地が描き出す、リニューアルされたBalmainの迷宮モチーフが広がります。また、コンパス、紙飛行機、そしてトラベルネックピローからもインスピレーションを得た、優れたデザインのバッグが多彩に展開します。

家族のインスピレーション
Balmain ラゲッジ&トランク コレクションは、ピエール・バルマンの祖父アレクサンドル・バルマンが150年以上前に肩に担いでヨーロッパを横断した美しいトランクにインスピレーションを得ています。アレクサンドルはバルマン家の富を築き上げた人物です。1800年代、商品を詰めたトランクを持って中央ヨーロッパを旅し、フランス、スイス、ドイツの顧客に選りすぐりの宝石、リボン、金属製品を提供していました。アレクサンドルは相当屈強であったに違いありません。大きなトランクを肩に担いで、町から町へ、顧客から顧客へと移動していました。驚くべき入れ物には12個の引き出しが付いており、空の状態でも20kg、最大で60kgの重さになりました。

BALMAIN 1945 トランク コレクション
Balmain 新作トランク&トラベルアクセサリー コレクション発表のために、オリヴィエ・ルスタンはピエール・バルマン時代のクラシックなメゾンのスタイルに立ち返りました。また、熟練のエベニスト(木工職人)やゲニエ(カバー職人)など、フランスが誇る卓越の職人技も駆使されています。木目が美しいサテン仕上げのアメリカンウォールナット材や、完璧なやわらかさを持つしなやかなカーフスキンなど、最高級素材だけを使用しています。本コレクションのスモールグッズは、他のBalmainバッグと同様に、イタリアの最も優れた革職人が製造しています。
バルマンとアメリカ
バルマンとアメリカとの強い結びつきは、当時のフランスのニュースでも取り上げられています。ロサンゼルスやニューヨークなど、アメリカ中の町や都市を何度も訪れる様子が報道されました。こうした旅は、親友のガートルード・スタインやアリス・B・トクラスの勧めによるものでした。彼女たちは祖国アメリカには、クチュール、歴史、フランスの伝統技術“サヴォワールフェール”に対するバルマンのユニークな視点を知りたい多くの聴衆がいることを知っていたのです。
伝説のミューズたち
メゾンの礎
